微生物の特許

社会や顧客が期待する新たな価値を提供します!

-微生物を利用して、海藻から糖やアルコールを製造する-

1.概要

微生物を利用して、海藻から糖を製造する海藻の糖化方法と、海藻の糖化方法により製造した糖を原料とするアルコールの製造方法ついて、特許権を取得しました(2018年1月5日登録 特許第6265446号)。

特許発明の内容を簡単にご紹介します。
詳細な内容につきましては、上記の公報をご覧ください。
なお、この特許は、開放特許情報データベース(https://plidb.inpit.go.jp)にも登録されている実施許諾が可能な特許です。

※上記の開放特許情報データベースのホームページに入り、トップページの「キーワード」の欄に、例えば、「海藻の糖化」または、「フザリウム」を入力し、「検索」をクリックすると、本件特許がヒットします。

2.背景

 海藻の1種であるアオサは、近年、海水の富栄養化により異常繁殖し、沿岸部に堆積して景観を悪化し、腐敗して悪臭を放ち、グリーンタイドと呼ばれ、環境問題になっています。
 アオサが異常繁殖する理由の1つは、高い増殖率にあり、たとえば、アオサの1種であるミナミアオノリの1日の成長率は112%もあるため、1週間で2倍以上に成長します。
 したがって、アオサの有効な利用方法を確立して環境問題を解消し、高い成長率を利用し、有望な有機資源として利用することが期待されています。
 この特許発明は、微生物を利用して、アオサ、テングサ等の海藻から糖を製造し、
製造した糖からアルコールを製造することにより、増殖可能な有機資源である海藻を有効利用するという新たな価値を提供します。

【図1】糖化時間と還元糖濃度との関係

3.糖の製造

 この特許発明は、カビ(フザリウム属)により、海藻(アオサ等の緑藻類、テングサ)から、還元糖を製造する発明です。還元糖には、麦芽糖等の二糖類や単糖類が含まれます。
 図1は、緑藻類の1種であるヒトエグサを原料にしたときの糖化時間(0~5時間)と、生成する還元糖濃度との関係を示す図です。

 図2は、処理温度(5~30℃)と還元糖濃度との関係を示す図です。controlは、カビを加えずに処理した比較例です。
また、図3は、糖化時のpHと還元糖濃度との関係を示す図です。

 糖化に使用するカビ(フザリウム属)は、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)(菌株名 F-engei)です。また、受託番号 NITE P-02291 として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(NPMD)に寄託しているため、微生物の分譲を受けることができます。

【図2】処理温度と還元糖濃度との関係

4.アルコールの製造

 この特許発明は、カビ(フザリウム属)により海藻から製造した還元糖を原料にし、細菌(エンテロバクター属)により、アルコールを製造する発明です。
 アルコールの製造に使用する細菌(菌株名 E-engei)は、エンテロバクター(Enterobacter)属に含まれます。また、受託番号 NITE P-02290として、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)に寄託しているため、分譲が可能です。

【図3】糖化時のpHと還元糖濃度との関係

 図4は、アルコールの生成量を比較するための図であり、吸光度が大きいほど、アルコールの生成量が多いことを表しています。
 微生物F群には、細菌(エンテロバクター属)(菌株名 E-engei)が含まれています。また、エチルアルコール(0.01%、0.1%、1%)は、アルコールの生成量を比較するために表示しています。
 「アオサ糖液3%」は、アオサ(海藻)を原料にしてカビ(フザリウム属)により糖化した糖化液(3Brix%)です。
 図4に示すように、すべての糖液において、微生物F群(菌株名 E-engei)によるアルコールの生成量は、市販酵母によるアルコールの生成量を大きく上回り、アオサ糖液からもアルコールを製造していることが分かります。また、微生物F群による、アオサ糖液3%からのアルコールの生成量は、エチルアルコール1.0%~0.1%の水準の相当しています。

【図4】アルコール生成量の比較